角度と距離

近代地図を下支えする正確な測量の中核は三角測量です。三角測量とは三角法の正弦比例に則った測量法で、角度によって正確な距離を測ることができます。角度は光学的測定によって知ることができ、距離を実測するよりも効率的に、しかも正確に測ることができるのです。当時の測量器具は車輪を用いた走行距離計が一般的でしたが、より正確に測るために開発されたのが側鎖でした。また角度を測るためのトランシットと呼ばれる道具も使われました。

ルネサンスで科学への希求が高まって以降も、地球を測定することは人類にとって大きな壁であり続けました。地球ほどの大きさのものを測るとなると、測定誤差が命取りになり、相当の科学水準が要求されるのです。三角測量による測定を初めて行ったのはオランダのスネリウスですが、3パーセントの誤差を出していました。近代地図に繋がるだけの正確な測量を実現したのは17世紀のピカールでしょう。ピカールと後継者のカッシニの活躍によってかなり正確なものが作られるようになりました。そうするうちに球体の正確な形状にも関心が向けられるようになりました。ニュートンが万有引力を発見すると、地球が楕円形である可能性が主張され、その証明まで測量に委ねられたのです。結局大変な苦労の末、地球が扁平楕円体であることが分かりました。

さて、ピカールの名が挙げられるように、近代国家群をリードする存在になりつつあったフランスが、地図作成においても抜きん出ようとしていました。重商主義政策と官僚制、軍隊で国の基盤を堅固なものにして、絶対王政は維持されました。ルイ王朝は科学と文化の発展を尊び、学者の育成や研究機関の創設を惜しみませんでした。